東京地方裁判所 昭和45年(ワ)8633号 判決
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〔判決理由〕一 原告の他人性
自賠法三条にいう他人とは、運行使用者および運転者以外の者をいうものと解すべきところ、原告本人尋問の結果によれば、事故車は訴外矩治が自己の通勤用に購入使用していたものであつて家族揃つて行うドライブなどの目的に同車を利用することは稀であつたことが認められるから、事故車の運行支配および運行利益は一般的にもつぱら夫である訴外矩治に帰属していたものというべく、また本件事故時の運行についてみるも、前記証拠によれば、本件事故は夫の実家である新潟へ墓参に赴くため同人が運転し、原告が同乗中に発生したというのであるから、原告は単なる同乗者に過ぎず、自賠法三条にいう他人に該当するものといわなければならない。
二 損害賠償請求の発生の有無
夫婦の一方が他方に対し不法行為をした場合は、それが夫婦であるからといつて直ちにいかなる損害賠償請求権も発生しないとはいえない。本件において、被害者たる原告(妻)が、訴外矩治(夫)の自動車運転上の過失により負傷し、第三者に対し治療費等支払の負担が生じた時は、加害者たる夫に対しその填補を請求することができないと断定すべき根拠に乏しく、従つて、自賠法一六条一項により、被告保険会社に対し直接これを請求することを妨げない。しかしながら、慰藉料については、本件交通事故のような夫の過失による妻の受傷の場合において、夫婦が円満な家庭生活を営んでいるかぎり、妻は夫に対し宥恕の念を持つのが通常であり、また、そのようにすべきものである。従つて、原告ら夫婦が今なお子供三人との円満な家庭生活を営んでいる本件においては(原告本人尋問の結果)、原告は夫に対し慰藉料を請求し得べき限りでなく、従つてまた、被告保険会社に対する直接請求権も有しない。
(坂井芳雄 浜崎恭生 鷺岡康雄)